◆γ-リノレン酸とは
γ-リノレン酸(ガンマリノレン酸、Gamma-Linolenic Acid=GLA)とは人間の生命維持において必ず摂取しなければならない必須栄養素(必須脂肪酸)のひとつ。オメガ6脂肪酸に分類され、細胞膜の材料となります。
その他オメガ6に分類される脂肪酸としてはリノール酸やアラキドン酸が挙げられます。
◆γ-リノレン酸の働き
細胞膜を整え、慢性炎症を鎮め、毛細血管レベルでの血流を改善する働きがあります。
①細胞膜の改善
細胞膜は2層の脂質の膜でできていて、とてもしなやかなつくりになっています。この柔軟性が外部とスムーズにやり取りをする上で非常に重要になります。この柔軟性を保つ上で不可欠なのがγ-リノレン酸です。
➁慢性炎症の鎮静化
慢性炎症とは、明確な原因がないままにだらだらと続く炎症反応のこと。
自覚症状がなく、それでいて本来攻撃対象でない健康な組織も攻撃してしまうため、じわじわと身体にダメージを与えていきます。
慢性炎症は近年、さまざまな疾病の原因として注目されています。
γ-リノレン酸から生成されるプロスタグランジンE1は慢性炎症を鎮める働きがあります。
慢性炎症が引き起こすと言われている疾病は、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患、自律神経失調症、うつ、動脈硬化、糖尿病、肝臓病、がん、アルツハイマーなど多岐に渡ります。
γ-リノレン酸を積極的に摂取することでこれらの疾病の予防や改善に繋げることができると考えられます。
また、実際に抗炎症効果を活かしてイギリスやドイツ、フランスなどではアトピー性皮膚炎用の医薬品として扱われており、治験データも豊富です。
③毛細血管レベルでの血流改善
毛細血管は極細で、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の直径より細い場合もあります。つまり、血液細胞は自分よりも狭い幅の血管を通り抜けていかないといけません。
細胞膜がゴムまりのように柔らかければ自分より細い隙間にも変幻自在に入っていけますが、石のように硬ければ途中でつっかえてしまいます。細胞膜が硬くなればなるほど毛細血管の血流は滞りやすくなります。
逆に、細胞膜を柔軟にすれば血液細胞が毛細血管をスムーズに通り抜け、血流が改善するというわけです。
γ-リノレン酸は細胞膜を柔軟にし、毛細血管レベルでの血流を改善する働きがありますので、この点でも必要不可欠な栄養素であるといえます
◆女性には特に重要
その他にもコレステロール値を下げたり、代謝促進の働きによりダイエット効果も期待できます。また、アルコール代謝を促進するため、肝機能の改善効果もあります。
逆にγ-リノレン酸が不足すると上記のような体調不良を引き起こしやすくなります。
また、ホルモンバランスにも大きく関係するため、特に女性は影響を受けやすい傾向があります。
さらに、子供にとっても非常に重要な成分であることが明らかになっています。
また、γ-リノレン酸は母乳に含まれますが、赤ちゃんの時にお母さんから十分にγ-リノレン酸をもらえないとアトピーなどのアレルギー症状が現れやすくなるといわれています。
授乳中の女性は自分の子供と自分自身の健康を守るという二重の意味で特に重要といえます。
◆オメガ6脂肪酸について
脂肪酸には、分子内の結合が一重結合(飽和結合)のみで構成されている飽和脂肪酸と、一部に二重結合、三重結合(不飽和結合)を持つ不飽和脂肪酸があります。基本的に、飽和脂肪酸は常温で固体、不飽和脂肪酸は常温で液体となります。
さらに不飽和脂肪酸の中でも二重結合を1個だけ持つものを一価不飽和脂肪酸、2個以上持つものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。
多価不飽和脂肪酸の中でも末端の炭素の位置から数えて6番目の位置に二重結合を持つ脂肪酸をオメガ6脂肪酸と呼びます。
一般的にオメガ6脂肪酸は摂り過ぎてはいけないとされますが、これは一部正解で一部誤りです。
現代人は食生活の欧米化でサラダ油、マヨネーズに多く含まれるリノール酸や肉、卵に多く含まれるアラキドン酸を摂取する機会が非常に多くなっています。
リノール酸もアラキドン酸も必須栄養素。食品やサプリメントとして積極的に摂取している方もいらっしゃるかと思います。しかし、実はこのリノール酸とアラキドン酸の過剰摂取が体調不良をもたらしている可能性があります。
リノール酸は必須脂肪酸でγ-リノレン酸の生成源ともなるため、一見すると摂取した方が良いと思われるかもしれません。
しかし実態としては逆で、リノール酸は現代食生活では摂取過剰となっており、γ-リノレン酸の体内生成阻害を引き起こしていると考えられています。
さらに、アラキドン酸は炎症物質を体内生成しますので、要注意です。過剰摂取すると炎症を引き起こし、アレルギーや生活習慣病などの原因となります。肉や卵などに多く含まれているので、これらの食品を食べ過ぎないように気を付ける必要があります。
一方でγ-リノレン酸は炎症を鎮めるという正反対の働きを持っており、積極的に摂取すべき栄養素です。「オメガ6」とい
◆γ-リノレン酸を摂取する方法
γ-リノレン酸は体内でリノール酸から生成されます。ただし、先述したようにリノール酸の過剰摂取は逆にγ-リノレン酸の生成や吸収を阻害するので注意が必要です。
また、ボラージやカシス種子、月見草といった植物や魚や海藻などにも微量に含まれていますが、一般的な食生活での十分な量の摂取は現実的に困難です。
食事からの摂取および体内での生成が困難ということで、サプリメントでの摂取が最も適している栄養素といえるかもしれません
◆植物由来のγ-リノレン酸と微生物由来のγ-リノレン酸
一般的なサプリメントのγ-リノレン酸は植物(月見草やボラージなどの種)抽出ですが、残念ながら働きが弱く、なかなか実感が得られまないことも多いようです。一方、微生物由来のγ-リノレン酸(シングルセルオイル)は働きが強いものの安定抽出・製造が難しく、高価になりやすい傾向があります。
また、月見草やボラージ油のリノール酸含有率は40~72%と高濃度のため、γ-リノレン酸摂取のつもりが、リノール酸の過剰摂取とならないよう注意が必要です。
サプリメントから摂取する場合は単純な含有量だけでなく、何から抽出されたものなのか、リノール酸の含有量はどの程度か、といったことも考慮する必要があります
◆アラキドン酸への変換について
γ-リノレン酸は体内でアラキドン酸へ変換されることがあります(逆はありません)。
こう書くとγ-リノレン酸も摂りすぎてしまうと良くないのではないかという心配されるかもしれませんが、心配いりません。
γ-リノレン酸からアラキドン酸への変換はアラキドン酸が不足している場合にのみ、それを補おうとして起こります。
先述したように現代人はアラキドン酸を過剰摂取、γ-リノレン酸が不足気味のため、実際にγ-リノレン酸がアラキドン酸に変換されることはほとんどありません。
もしあったとしてもそれはアラキドン酸が不足している場合ですので、身体にとって必要な反応といえます。

